九州駅伝の覇権を懸けた一騎打ち――旭化成か、黒崎播磨か

2025年11月3日、九州の駅伝シーンを象徴する「九州実業団毎日駅伝」が、今年も大分県佐伯市で開催されます。
ニューイヤー駅伝への切符を懸けたこの戦いは、絶対王者・旭化成と、昨年1秒差で涙をのんだ黒崎播磨の因縁の対決が最大の見どころ。さらに、三菱重工や九電工などの強豪も虎視眈々と上位進出を狙います。
本記事では、優勝候補の戦力分析、注目選手、区間エントリーの正式発表日時、そして勝敗を分ける区間戦略を徹底解説します。
九州実業団毎日駅伝とは
九州実業団毎日駅伝は、1964年に第1回大会が開催された歴史ある駅伝大会で、九州実業団陸上競技連盟と毎日新聞社が主催しています。
この大会は、全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)への出場権を懸けた九州地区予選という重要な位置づけを持ち、毎年11月に開催されます。
開催日について
第62回九州実業団毎日駅伝競走大会(2025年大会)は、2025年11月3日(月・祝)に開催されます。
スタート時刻は午前9時、場所は大分県佐伯市・佐伯中央病院陸上競技場発着で、7区間・全長89.3kmのコースを走ります。
この大会は、全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)への出場権を懸けた九州地区予選であり、上位9チームが元旦の群馬決戦への切符を手にします。
大会の特徴
開催地とコース
2024年からは大分県佐伯市で行われ、佐伯市総合運動公園陸上競技場を発着点とする7区間・全長89.3kmのコースを走ります。
区間構成は、最長18.3kmの2区を含む長距離型で、山岳区間の5区やアンカーの7区が勝敗の鍵となります。
出場枠
上位9チームがニューイヤー駅伝への出場権を獲得します。九州の強豪企業チームが集結し、熾烈な争いが繰り広げられます。
歴史と王者
最多優勝は旭化成の48回(2024年現在)。
- 2024年:旭化成が黒崎播磨を1秒差で破り優勝(4時間21分16秒)
- 2023年:黒崎播磨が旭化成を下し優勝(3時間53分11秒)
- 2022年:黒崎播磨が連覇(3時間52分29秒)
- 2021年:旭化成が優勝(3時間48分11秒)
- 2020年:旭化成が優勝(3時間51分31秒)
旭化成は長年にわたり九州駅伝界を牽引する絶対王者であり、黒崎播磨や九電工、三菱重工などがその牙城を崩そうと挑み続けています。
コースの変遷
- 1964年~1972年(第1回~第9回):福岡県内コース
- 1973年~1986年(第10回~第23回):大分市~臼杵市折り返し
- 1987年~2015年(第24回~第52回):福岡市~筑豊~北九州市
- 2016年~2023年(第53回~第60回):北九州市内周回(本城陸上競技場発着)
- 2024年~現在:大分県佐伯市、佐伯市総合運動公園陸上競技場発着の7区間89.3km周回コース。
大会の魅力
- 箱根駅伝出身選手やマラソン日本代表クラスが多数出場し、企業スポーツの最高峰の戦いを間近で見られる大会。
- 九州ならではの地域色と企業対抗のドラマが詰まった駅伝で、駅伝ファンにとって見逃せないイベントです。
動画配信について
CTSケーブルテレビ佐伯 YouTubeチャンネルで配信予定のようです。
区間エントリーの正式発表について
九州実業団毎日駅伝の区間エントリー(最終オーダー)は大会前日の11月2日に発表されるのが通例です。2025年大会も同様で、11月2日(日)午後に公式発表される予定です。
発表の流れ
- 大会日程:2025年11月3日(月・祝)
- 区間エントリー発表:前日(11月2日)13:30頃
- 各チームは最大12名を登録し、当日7名+補欠でオーダーを組む。
- 外国人選手は4区限定という規定あり。
昨年の事例
2024年大会では、11月2日に区間オーダーが公開され、
- 旭化成:アンカーに相澤晃、6区に村山謙太、葛西潤は補欠。
- 黒崎播磨:2区に田村友佑、3区に細谷恭平、7区に福谷颯太。
- 三菱重工は1区に井上大仁、2区に山下一貴を配置。
区間エントリー発表
九州実業団毎日駅伝では、区間エントリーの変更は大会規定により「補員登録選手を使って当日変更可能」です。各チームは最大12名を登録(7名+補員)し、大会当日に補員を使って区間変更が可能。当日変更は、スタート前に大会本部へ届け出る必要あり。
旭化成
1区:井川龍人
2区:亀田仁一路
3区:山本歩夢
4区:中西大翔
5区:齋藤椋
6区:相澤晃
7区:茂木圭次郎
黒崎播磨
1区:小泉樹
2区:福谷颯太
3区:田村友佑
4区:S.キプロノ
5区:井手翔琉
6区:田村友伸
7区:細谷恭平
三菱重工
1区:近藤亮太
2区:山下一貴
3区:吉岡遼人
4区:K.エマヌエル
5区:定方俊樹
6区:守屋和希
7区:小林大晟
旭化成の注目選手
旭化成は、絶対王者として48回の優勝を誇るチームであり、今年も圧倒的な戦力を揃えています。昨年の1秒差勝利が示すように、接戦での対応力が高い。特に注目すべきは以下の選手たちです。
相澤晃(アンカー候補)
- 東京五輪10000m代表、昨年の大会でラスト100mの死闘を制し優勝を決めたエース。
- 10000m自己ベスト:27分13秒(日本選手権)。
- 勝負強さとスピードで、7区アンカーの最終決戦で黒崎播磨・福谷颯太との再戦が予想されます。
葛西潤(エース区間候補)
- パリ五輪10000m出場、東京世界陸上でも活躍した現役日本トップクラス。
- 10000m自己ベスト:27分17秒。
- 長距離での安定感があり、2区18.3kmの最長区間で区間賞候補。
井川龍人(中盤の要)
- 八王子ロングディスタンスで27分39秒を記録する実力者。
- 3区や6区での起用が予想され、中盤での流れを作るキーマン。
齋藤椋(山岳区間の切り札)
- 昨年の大会で5区区間賞を獲得し、チームを逆転に導いた選手。
- 15.5kmのアップダウンに強く、黒崎播磨・土井大輔との直接対決が見どころ。
キプルト・エマニエル・キプロプ
- 昨年4区で区間3位、今年もスピード区間での起用が濃厚。
- 短距離区間でのタイム短縮要員として、旭化成の戦力をさらに強化。
黒崎播磨の注目選手
黒崎播磨は、昨年の大会で旭化成に1秒差で敗れた悔しさを胸に、今年こそ王座奪還を狙うチームです。前半から攻める布陣と、粘り強い走りが特徴。福谷のラストスパートは旭化成にとって最大の脅威です。注目選手は以下の通りです。
細谷恭平(エース候補)
- 東京五輪マラソン代表経験を持つ実力者。
- 10000m自己ベスト:27分54秒83(八王子ロングディスタンス)。
- 昨年の大会では3区で区間2位、今年も中盤で主導権を握るキーマン。
田村友佑(最長区間候補)
- ハーフマラソン自己ベスト:1時間00分38秒(全日本実業団ハーフ)。
- 最長区間18.3kmを任されることが多く、序盤から攻める黒崎播磨の戦略の要。
福谷颯太(アンカー候補)
- 昨年の大会で7区区間賞(41分17秒)を獲得し、最後まで旭化成を追い詰めた選手。
- 10000m自己ベスト:28分27秒50、ハーフも1時間00分58秒とスピードとスタミナを兼備。
土井大輔(山岳区間候補)
- ハーフ自己ベスト:1時間00分51秒、アップダウンに強い選手。
- 昨年の大会では5区区間2位(45分39秒)、旭化成・齋藤椋との直接対決が見どころ。
キプロノ・シトニック
- 10000m自己ベスト:27分12秒27(日本選手権)。
- 昨年も4区で安定した走りを見せ、今年もスピード区間での起用が濃厚。
三菱重工の注目選手
三菱重工は旭化成や黒崎播磨に比べると総合力で劣るため、優勝争いは厳しいですが、個人で光る選手は複数います。昨年も総合6位でニューイヤー駅伝出場権を獲得しており、区間賞を2つ獲得するなど、部分的な強さは健在です。
近藤亮太
- 東京世界陸上マラソン11位の実績を持つ日本代表経験者
- 長距離耐性が高く、2区(18.3km)や5区(山岳区間)での起用が有力。
井上大仁
- リオ五輪マラソン代表、昨年の大会では1区で区間2位(37分01秒)を記録。
- 序盤で流れを作る役割を担うベテラン。
山下一貴
- 昨年の大会で2区区間4位(54分13秒)、粘り強い走りでチームを支えた。
- 長距離区間で安定感を発揮。
吉岡遼人
- 昨年3区で区間賞(32分12秒)を獲得したスピードランナー。
- 中盤で流れを変えるキーマン。
キプラガット・エマヌエル
- 昨年4区で区間賞(17分58秒)を獲得。
- スピード区間での起用が濃厚。
クラフティア初陣の注目ポイントと選手解説
クラフティア(旧・九電工)は、2025年大会で社名変更後の初陣を迎えます。このチームは、パリ五輪マラソン6位の赤﨑暁と、駒澤大学出身の山野力という強力な選手を擁し、いきなり上位進出を狙う注目株です。
クラフティアの特徴
- 企業名変更で新たなスタート:2024年10月に九電工からクラフティアへ社名変更。
- 駅伝文化の継承:九電工時代からの伝統を引き継ぎ、ニューイヤー駅伝常連チームとしてのプライドをかける。
- 戦力補強:赤﨑暁(パリ五輪6位)を中心に、山野力ら実力者を揃えた布陣。
- ダークホース的存在:旭化成・黒崎播磨に次ぐ第3勢力として台頭する可能性あり。
山野力(最長2区候補)
- プロフィール:駒澤大学出身、クラフティア主将。
- 昨年の九州実業団駅伝では1区で区間3位(37分19秒)。
赤﨑暁
- 実績:パリ五輪マラソン6位、ベルリンマラソン2位(2025年9月)。
- 役割:中盤の重要区間(3区または5区)で勝負どころを担う可能性が大きい。
旭化成 vs 黒崎播磨の区間戦略比較
両チームの戦力は拮抗していますが、戦略の方向性が異なるため、区間ごとの配置予想と勝負ポイントを比較します。
1区(11.5km)スタート区間
- 旭化成:経験豊富なベテラン(市田孝や茂木圭次郎)を配置し、安定した入りを狙う。
- 黒崎播磨:井上大仁や田村和希などスピード型を投入し、序盤からリードを奪う戦略。
黒崎播磨は攻め、旭化成は堅実。
2区(18.3km)最長区間
- 旭化成:葛西潤を投入し、エース区間で確実に区間賞を狙う。
- 黒崎播磨:田村友佑で対抗。ハーフマラソンで好記録を持つため、粘り強く食らいつく。
勝敗の鍵を握る最重要区間。旭化成がやや優勢と予想。
3区(10.9km)スピード区間
- 旭化成:井川龍人で流れを維持。
- 黒崎播磨:細谷恭平を投入し、ここで逆転を狙う。
黒崎播磨が攻勢に出る区間と予想。
4区(9.5km)外国人区間
- 旭化成:キプルト・エマニエル。
- 黒崎播磨:キプロノ・シトニック。
両チームともハイレベル外国人。タイム差はほぼ出ない可能性。
5区(15.5km)山岳区間
- 旭化成:齋藤椋(昨年区間賞)。
- 黒崎播磨:土井大輔(昨年区間2位)。
昨年同様、直接対決。旭化成がやや有利。
6区(10.7km)終盤のつなぎ
- 旭化成:ベテランや若手で安定重視。
- 黒崎播磨:粘り強い選手で逆転を狙う。
7区(12.9km)アンカー
- 旭化成:相澤晃(昨年ラスト100mで勝利)。
- 黒崎播磨:福谷颯太(昨年区間賞)。
昨年の再現必至。ラスト勝負の可能性大。
戦略の違いまとめ
- 旭化成:中盤(2区・5区)で勝負を決める王道戦略。
- 黒崎播磨:序盤(1区・3区)でリードを奪い、アンカー勝負に持ち込む攻撃型。
勝敗予想と展望|旭化成 vs 黒崎播磨 どっちが勝つ?
昨年の激闘を振り返る
2024年大会は、旭化成が黒崎播磨をわずか1秒差で下し優勝しました。
アンカー7区で相澤晃と福谷颯太が並走し、ラスト100mで決着するという歴史的な接戦。
この因縁が、2025年大会の最大の見どころです。
今年の戦力比較
旭化成の強み
- 日本代表クラスの層の厚さ(相澤晃・葛西潤・井川龍人)。
- 昨年区間賞の齋藤椋(5区)と外国人キプルトの存在。
- 中盤(2区・5区)で勝負を決める王道戦略。
黒崎播磨の強み
- 細谷恭平・田村友佑・福谷颯太の「攻撃型布陣」。
- 前半(1区・3区)でリードを奪い、アンカー勝負に持ち込む戦略。
- 昨年アンカー区間賞の福谷颯太が再びキーマン。
勝敗の鍵となる区間
- 2区(18.3km):葛西潤 vs 田村友佑
旭化成がやや優勢。
- 5区(山岳区間):齋藤椋 vs 土井大輔
昨年同様、旭化成がリードを広げる可能性。
- 7区(アンカー):相澤晃 vs 福谷颯太
昨年の再現必至。接戦なら黒崎播磨にも勝機あり。
展望と予想
- 旭化成がやや優勢
中盤でリードを奪い、アンカーで逃げ切る展開が濃厚。
- 黒崎播磨が勝つ可能性
1区・3区でリードを奪い、アンカー勝負に持ち込めば逆転のシナリオも。
- 三菱重工は区間賞争いで存在感
優勝争いには届かないが、上位9位以内は確実。
結論
旭化成が本命。しかし、黒崎播磨が序盤で攻め、アンカー勝負になれば昨年同様のドラマが再び訪れる可能性大です。
観戦スポットのおすすめ
スタート&ゴール:佐伯中央病院陸上競技場
最大の観戦ポイント。選手のスタートダッシュとゴールの瞬間を間近で見られます。優勝争いやタスキリレーの緊張感を味わえる場所。おそらく佐伯市運動公園駐車場が利用可能です。
佐伯市屋内運動広場前(中継所)
全区間の中継所で、タスキリレーを間近で観戦できます。
山岳区間(5区・川井バス停折り返し付近)
アップダウンが激しい区間で、選手の粘り強さが試される場面。車両進入制限があるため、徒歩または自転車での移動がおすすめ。
アンカー勝負ポイント(7区・堅田駐在所入口付近)
ラスト10km付近で、旭化成と黒崎播磨の選手の並走が見られる可能性大です。
九州駅伝、決戦の地・佐伯で歴史が動く――勝者は旭化成か黒崎播磨か

九州実業団毎日駅伝は、単なる予選ではありません。
企業の誇りを背負い、選手たちがタスキに込める想いが交錯する舞台です。
旭化成の王者としての意地か、黒崎播磨の悲願達成か――その答えは11月3日、大分県佐伯市で明らかになります。
熱い戦いを、ぜひ現地で、あるいは速報で見届けてください。

