守るだけじゃない。モロッコは“勝てる守備”を持っている

2026年ワールドカップで、モロッコ代表が再び世界の注目を集めている。
グループCでブラジルと1-1の引き分け。さらにスコットランド戦では1-0で確実に勝利。
この2試合の結果を見て、「なぜモロッコはここまで強いのか?」と感じた人も多いだろう。
ベスト32で日本代表と対戦する可能性があるモロッコ代表
単なる堅守のチームではない。モロッコは、強豪相手にも崩れない守備組織と、
試合をコントロールする戦術、そして勝ち切る力を兼ね備えている。
本記事では、ブラジル戦とスコットランド戦の出場選手や試合データをもとに、
モロッコ代表の強さの理由を徹底的に解説する。
モロッコ代表はなぜ強いのか?結論から解説
結論から言えば、モロッコ代表の強さは「守備組織・戦術理解・中盤の決定力」この3つが高いレベルで融合している点にある。
特に重要なのは、従来のモロッコと異なり、“前線の個に頼らず、中盤で試合を決められるチーム”へ進化していることだ。
2026年ワールドカップでは、従来の主力であった
ハキム・ツィエクやユセフ・エン・ネシリが最終メンバーから外れ、
攻撃の構造そのものが変化している。
その中で中心となっているのが、
- イスマエル・サイバリ
- ブラヒム・ディアス
といった“中盤から違いを生み出せる選手”である。
実際にブラジル戦では、ディアスのパスからサイバリが得点を奪い、
世界最強クラスの相手から1-1の引き分けに持ち込んだ。
さらにスコットランド戦では、開始70秒で同じくディアス→サイバリの形から先制点。
この1点を守り抜き、勝利を収めている。
この2試合に共通しているのは、
- 崩れない守備ブロック
- 試合に応じた戦術の柔軟性
- 中盤から得点を生み出す構造
である。
特に重要なのは、「試合の流れを自分たちで動かせる点」だ。
かつてのモロッコは守備力が評価される一方で、
攻撃は限定的で、個の力に依存する部分もあった。
しかし現在は、サイバリの得点力とディアスの創造性を軸に、
守りながら、チームとして得点を奪える構造」が確立されている。
さらにアムラバトを中心とした中盤の守備、ハキミやマズラウィの運動量、そしてブヌの安定したセービングが加わることで、攻守が高度にバランスされたチームが完成している。
守るだけでは勝てない。
攻めるだけでも勝てない。
その両方を実現し、さらに中盤で試合を決められる。これこそが、現在のモロッコ代表が強い最大の理由である。
モロッコ代表を支えるキープレイヤー
モロッコ代表の強さは組織力だけではない。
その土台の上に、試合を決定づけるキープレイヤーの存在がある。
ブラジル戦のような強豪相手でも崩れず、スコットランド戦のような接戦を勝ち切れる背景には、攻守の要となる選手たちの高い個の能力が不可欠だ。
ここでは、2試合の内容を踏まえながら、モロッコの中核を担う選手たちを解説する。
イスマエル・サイバリ(試合を動かす中盤のダイナモ)
モロッコ代表の中盤において、攻撃と結果を結びつける存在がイスマエル・サイバリだ。
つまりサイバリは、単なる中盤の一員ではなく、「試合の流れを決定づけるキープレイヤー」である。
サイバリはスコットランド戦で先制ゴールを記録し、
チームに主導権をもたらしただけでなく、
ブラジル戦でも貴重な得点を挙げている。
ブラジル戦では、ブラヒム・ディアスからの絶妙なパスに抜け出し、ブラジルの名手アリソン・ベッカーの頭上を抜く華麗なループシュートを決めてモロッコに先制点をもたらしました。
スコットランド戦では、開始わずか70秒でレアル・マドリードのブラヒム・ディアスのアシストから、イスマエル・サイバリが電撃的な先制ゴールを記録。これが大会最速ゴールとなり、そのまま決勝点となりました。
このゴールは単なる得点ではなく、“モロッコの試合運びを決定づける一撃”だったと言える。
ハイチ戦の前半アディショナルタイム(45+1分)のイスマエル・サイバリのゴールは、ハイチに勝ち越された直後の重苦しい雰囲気を払拭する、モロッコの「右サイドの連動性」が凝縮された見事な崩しでした。
モロッコのキャプテンである右サイドバックのアクラフ・ハキミが、高い位置へ爆発的なスプリントで駆け上がりました。
ハキミが右サイドの深い位置から、相手ディフェンダーとゴールキーパーの間に鋭い低めのクロスを供給しました。
中央に走り込んでいたイスマエル・サイバリが、相手マークを巧みに外してこのクロスに反応。難しいバウンドのボールに対して体勢を崩さずに合わせ、ゴールネットを揺らしました。
ハイチに2点目を決められたわずか2分後という最高のタイミングでの同点弾でした。2−1でリードされたままハーフタイムを迎えるという、モロッコにとって最悪のシナリオを阻止しました。
モロッコは守備の完成度が高い一方で、
試合を動かす“決定的な一手”が求められる場面も多い。
その中でサイバリは、攻撃の推進力と得点力を兼ね備えた“最も現代的な中盤”として、モロッコを「守れるだけのチーム」から「勝ち切れるチーム」へと進化させている。
アクラフ・ハキミ(攻守を支配する右サイド)
モロッコ代表の象徴とも言える存在が、右サイドバックのアクラフ・ハキミだ。
ブラジル戦では、相手の強力な左サイドアタックに対して粘り強く対応しながらも、
ボールを奪えば一気に前線へと持ち上がる推進力を発揮した。
ハイチ戦前半39分のアクラフ・ハキミの同点ゴールは、モロッコが失点後の焦りからリズムを掴み直し、波状攻撃を実らせたキャプテン執念の一撃でした。
モロッコがハイチ陣内へ押し込み、ペナルティボックス手前で細かいパスワークから相手ディフェンスの隙を突きました。
モロッコが放った強力なシュート(またはボックス内へのラストパス)は一度ハイチ守備陣にブロックされました。
右サイドバックの位置から中央へ鋭く走り込んでいたハキミが、そのこぼれ球にいち早く反応。相手ディフェンダーがクリアするよりも一瞬早く押し込み、試合を1-1の振り出しに戻しました。
彼の特徴は以下の通り。
- 圧倒的なスピードと上下動の運動量
- 守備での対人対応能力
- 攻撃参加からのクロスやシュート
単なるサイドバックではなく、“攻撃の起点にも守備の要にもなる万能型プレーヤー”であり、モロッコの戦術を成立させる存在だ。
ブラヒム・ディアス(攻撃に変化をもたらす切り札)
スペイン育ちのテクニシャンであるブラヒム・ディアスは、モロッコの攻撃に“変化”をもたらす存在だ。
ブラジル戦とスコットランド戦では、
いずれもサイバリの得点を引き出す決定的なラストパスを供給し、
チャンスを確実にゴールへと結びつけた。
「違いを生み出せる存在」として、攻撃の質を一段引き上げている。
ブラジル戦のような膠着した展開では、
狭い局面を打開するドリブルやアイデアが大きな武器になる。
- 高い足元技術
- 狭いスペースでの突破力
- 攻撃にリズムを生むプレー
停滞を打ち破る個の力
ヤシン・ブヌ(最後の壁となる守護神)
モロッコの堅守を語る上で欠かせないのが守護神ブヌだ。
ブラジル戦ではビッグセーブでチームを救い、
スコットランド戦でも安定した対応で無失点に貢献。
- シュートストップ能力
- ハイボール処理の安定感
- PK戦にも強いメンタル
“1点を守り切る力”の象徴
ソフィアン・アムラバト(中盤を支配する心臓)
守備のバランサーとして欠かせないのがアムラバトだ。
ブラジル戦では相手の中央攻撃を封じ、
スコットランド戦でもボール奪取と配球で試合を安定させた。
- 守備範囲の広さ
- セカンドボール回収
- シンプルかつ正確な配球
チームの安定性を支える“心臓部”
ブラジル戦で崩れない守備

2026年ワールドカップ・グループC第1節のブラジル戦(1-1)で、モロッコ代表は極めて完成度の高い「崩れない守備」を披露した。ヴィニシウス・ジュニオールの個人技による1失点のみに抑え、優勝候補ブラジルの攻撃陣を封じ込めることに成功している。
その要因の一つが、前線からの積極的なプレスだ。FW陣やイスマエル・サイバリらが高い位置から圧力をかけ、ブラジルのビルドアップを寸断。中盤を経由したスムーズな攻撃の組み立てを大幅に制限した。
ブラジル戦では、イスマエル・サイバリがブラヒム・ディアスからの絶妙なパスに抜け出し、ブラジルの名手アリソン・ベッカーの頭上を抜く華麗なループシュートを決めてモロッコに先制点をもたらしました。
また、プレスをかいくぐられた場面でも、守備陣は素早く撤退し、中央に極めてコンパクトな守備ブロックを形成。パスコースとスペースを消すことで、ブラジルに横パス主体の消極的な展開を強いた。
さらにサイドでは、チーム全体が連動した守備対応を見せた。ヌサイル・マズラウィはチーム最多となる15回のターンオーバーを記録し、右サイドの攻撃を封鎖。アクラフ・ハキミも4度のタックルをすべて成功させ、左サイドの突破を許さなかった。
中盤では18歳の新星アイユーブ・ブアディが11.87kmの走行距離で広範囲をカバーし、守備の安定性を支えた。加えて、守護神ヤシン・ブヌが枠内シュート3本を確実にセーブし、最後の砦として機能した。
ボール保持率ではブラジルに上回られた(54%)ものの、決定機はほぼ与えず、組織として試合を完全にコントロール。モロッコの守備は、前回カタール大会のベスト4進出が偶然ではないことを証明する、成熟した完成度を見せた。
スコットランド戦で1−0を勝ち切る戦力
スコットランド戦(1-0)は、モロッコ代表の“勝ち切る力”と同時に、
その戦力の高さを証明する試合だった。
試合全体を通してモロッコは主導権を握り続け、支配率60%、
パス成功数601本というアフリカ勢最多記録を樹立。
中盤のエル・アイナウイ、ウナヒ、ブラヒム・ディアスらが主導し、
ゲームを完全にコントロールした。
さらに前半開始直後、イスマエル・サイバリが先制ゴールを奪ったことで、
試合展開はモロッコに大きく傾いた。
しかし、その後は決定機を活かしきれず、追加点を奪えなかった。
サイバリのシュートがポストに直撃し、
エル・カンヌスのヘディングもGKに阻まれるなど、
内容的には「複数得点も可能だった試合」が1-0に留まった。
終盤にはスコットランドのパワープレーを受ける展開となり、
ロングボール中心の猛攻に晒されたものの、
守備陣は冷静に対応し、相手の枠内シュートを0本に封じた。
結果としてスコア上は辛勝に見えるが、内容的には明確な戦力差が存在した試合であり、
「支配できる力」と「守り切る力」の両方を兼ね備えていることを示した一戦となった。
この勝利によりモロッコは勝点4でグループ2位に立ち、
決勝トーナメント進出へ大きく前進している。
モロッコ4-2ハイチ乱打戦を制す
前半:ハイチの歴史的奮闘とモロッコの猛追
試合の立ち上がりは、予想通りモロッコがボールを保持し、主導権を握る展開。
アクラフ・ハキミを中心に右サイドから押し込み、ポゼッション優位を築きます。
しかし、先制したのはハイチでした。
10分:ハイチが歴史的ゴール
右サイドの鋭いクロスにレニー・ジョセフが飛び込み、モロッコGKヤシヌ・ブヌのオウンゴールを誘発。
これはハイチにとって実に52年ぶりのW杯本大会ゴール。
一瞬の隙を突いたカウンターの質の高さが光りました。
モロッコの修正力と同点弾(39分)
失点後も慌てないのが現在のモロッコの強さ。
- セカンドボール回収を徹底
- サイドからの圧力を継続
- ペナルティエリア内への侵入回数増加
そして39分、キャプテンのハキミが混戦から押し込み同点。
「圧力の継続」が生んだゴールであり、個人能力+組織力の融合が見えた場面でした。
ハイチの衝撃再び(43分)
しかし試合はここで終わりません。
ウィルソン・イシドールが放ったのは、ペナルティエリア外からの強烈なロングミドル弾。
- シュートコース:ゴール左上隅
- ブヌでも触れない完璧な軌道
大会屈指のスーパーゴールと言っていい一撃で、ハイチが再びリード(2−1)。
前半アディショナルタイム:再度振り出し
モロッコの底力が最も表れたのはここ。
45+1分、ハキミの精度の高いクロスにサイバリが合わせて同点。
後半:選手層の差が勝敗を分けた
後半も試合の主導権はモロッコ。
ただし、ハイチも守護神ジョニー・プラシドを中心に粘り強い守備を展開。
後半総括は、モロッコが選手層・戦術柔軟性・フィジカルで圧倒、ハイチは前半の勢いは維持できず、「総合力の差」が最後にスコアへ反映された形です。
試合を動かした分岐点:給水タイム後の交代策
この試合最大のターニングポイントはここです。
モロッコはハイドレーションブレイク後に
- ブライム・ディアス
- サイバリ
といった主力を下げ、フレッシュな選手を投入。
一見リスクのある決断ですが、結果的にこれが試合を決めました。
78分:セットプレーから逆転
後半78分のソフィアン・ラヒミの勝ち越しゴールは、モロッコがそれまでの停滞感を打破するために準備してきた「セットプレーの仕掛け」と「交代策」が見事に結実した瞬間でした。
右サイドからのコーナーキック。キャプテンのアクラフ・ハキミが、ニアサイド(手前のゴールポスト付近)を狙って鋭いクロスを供給しました。
ニアに走り込んだディフェンダーのシャディ・リアドが、頭(または足元)でボールの軌道を後ろへそらす巧みなフリックを見せました。
中央で待ち構えていたソフィアン・ラヒミが、この流れてきたボールに素早く反応。相手守備陣の一瞬の隙を突き、値千金の勝ち越しゴールを押し込みました。
2-2の同点のまま、ハイチの粘り強い守備と守護神プラシドの好セーブに苦しんでいたモロッコにとって、この試合で初めてリードを奪う極めて重要な1点となりました。
後半のハイドレーションブレイク(給水タイム)明けに、前線の活性化を狙って投入されたラヒミが期待に一発で応え、モロッコの選手層の厚さを見せつけました。
89分:試合を決定づけるダメ押し
試合終盤の89分に生まれたジェシム・ヤシンのダメ押しゴールは、ハイチの息の根を止め、モロッコの勝利を決定づけた気迫あふれるゴールでした。
前方に供給されたボールに対し、78分に勝ち越し弾を決めていたソフィアン・ラヒミが猛烈なプレスをかけました。ハイチのディフェンダーからゴールライン際で粘り強くボールを奪い取ります。
ライン際でキープしたラヒミは、慌てることなく中央の状況を確認。ペナルティエリア内に走り込んできた味方へ、絶妙なマイナスのパスを折り返しました。
後半途中に投入されていたジェシム・ヤシンが、このパスに走り込みながら合わせてゴール。ハイチの追撃の意志を挫くチームの4点目をマークしました。
ハイチは一発のカウンターを狙って前がかりになっていましたが、この4点目によってモロッコは残り時間とアディショナルタイムを安全にコントロールできるようになりました。
アシストのラヒミ、そして得点したヤシンともに後半からピッチに入った選手であり、モロッコのベンチ層の厚さとレグラギ監督の交代策の完全な的中を証明するゴールとなりました。
まとめ
ブラジル戦の1-1、スコットランド戦の1-0――。
この2試合は、モロッコ代表の強さが偶然ではなく、
明確な戦術と構造に裏付けられていることを証明するものだった。
ブラジル戦では、世界トップレベルの攻撃陣を相手に
組織的な守備で対抗し、試合を壊さず結果を引き寄せた。
一方、スコットランド戦では、
ボール支配とパスワークで試合をコントロールし、
1点を守り切ることで確実に勝利を手にした。
この2つの試合から見えてきたのは、
- 崩れない守備組織
- 試合に応じた柔軟な戦術
- 中盤から得点を生み出す新たな攻撃構造
という、現代サッカーにおける完成度の高さだ。
特に、ブラヒム・ディアスとイスマエル・サイバリを中心とした
「中盤主導型の攻撃」が機能している点は、
過去のモロッコ代表からの大きな進化と言える。
守るだけではなく、自ら試合を動かし、勝ち切ることができる――。
それが現在のモロッコ代表の最大の強みである。
グループCで首位に立ったモロッコは、
決勝トーナメント進出に向けて大きく前進している。
このまま安定した戦いを続けることができれば、
2022年大会に続き、再び世界を驚かせる存在になる可能性は十分にある。
モロッコはもはやダークホースではない。“優勝候補の一角”として注目すべきチームである。
守備で世界を止め、戦術で試合を制す。これがモロッコの新しい強さだ
守り抜くだけではない。
支配し、そして勝ち切る。
モロッコ代表は今、
確かな戦術と進化した攻撃力を武器に、
世界の頂点を本気で狙うチームへと変わりつつある。
2026年ワールドカップ――
その存在感は、まだ序章に過ぎないのかもしれない。







